2014年12月11日木曜日

20141211:カキとヨロイグサ。


かつて、雑誌編集者になるより前に、
私は印刷会社でカタログの企画制作をしていました。
「カタログ」と言うと、多くの人が思いつくのはきっと、
通販などの、雑誌のようにおもしろく整理されたカタログでしょう。
私が作っていたのは、配管部品やネジや建具のような
かなりマニアックな商品の総合カタログ。
いわゆるプロユーザーのためのカタログで、
ほとんどのものが1000〜2000頁もあるようなぶっといもの。
一般的にはほとんど日の目を見ることはありません。
でも、私はこの仕事が本当に好きでした。
ヘッダーやフッター、ツメや商品スペックのフォーマットなど
直感的な目の動きや手の動きを意識して、
罫線の太さや書体、情報の配分を設計するのはすごくおもしろかった。

前置きが長くなりました。
配管部品の総合カタログの新しい見せ方の企画を練っていたころ、
かわいがってくれていた上司が
回らない寿司屋に連れていってくれたことがありました。
そのときはまだその上司とも付き合いが浅く、
なんとなく緊張して、なんとなく沈黙のまま食べていたら、
(沈黙のペースが心地よいと、沈黙のままになってしまいます)
そこの大将に「うちの店は喋っていい店だよ」と心配されたので、
何か喋ることはないか、頭の中の引き出しをごそごそと探っていると、
(一度沈黙の心地よさに慣れると、沈黙を打ち破る何かが見つからない)
上司もその大将の言葉に慌てたのでしょう、飛び出した話は、
「うちの奥さんの持ってきた茶箪笥の上にエビアンのペットボトルが載ってて、
寝転びながら眺めてみたら『組み合わせがいい』と気がついた」という話。
それが何かを暗喩しているような気もするし、
いや、何も含まれていないような気もするし、
その話が一体どこに向かうのか、同時に、その寿司屋で何を食べるべきか、
私は何を返事すべきなのか、困惑の中に迷い込んでしまったのを覚えています。
せっかくの寿司屋だったのに、私にとってはそれが強烈すぎて、
どこの寿司屋に行ったのかも、どうやって行ったのかも、
どうやって帰ったのかも忘れてしまった。

そして、その話は、この、カキとヨロイグサの組み合わせを見たときに
頭にふっと浮かんだのでした。

残念ながら、薬草園のカキは渋柿なのです。
先生が言うには「ドライアイスで甘くなる」とのこと。
たしかに、先生がドライアイスで処理したカキはすごく甘かった。
どういう変化が起きているのでしょう。

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Spandau Ballet "True"
「はっははー」のとこのメロディがツボやね。

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